BetaflightのPIDチューニングに興味を持ったものの、P、I、D、Feedforward、フィルターといった専門用語が並ぶ画面を見て、どこを触ればよいのかわからなくなった初心者は少なくありません。
インターネット上には個別のPID数値や高度なBlackbox解析が数多く紹介されていますが、機体の重量、モーター、プロペラ、バッテリー、フレーム剛性、ファームウェアの世代が違えば適切な設定も変わるため、他人の数値をそのまま入力する方法には限界があります。
初心者が最初に身につけるべきなのは完璧な数値を探すことではなく、機体の機械的な問題を取り除き、デフォルト設定を基準にしながら、Betaflightの簡易チューニング用スライダーを一項目ずつ動かして変化を確かめる手順です。
ここでは初飛行前の準備からTracking、Damping、Stick Responseの調整、症状別の判断、モーター温度の確認、プリセットやBlackboxの使い方までを順番に整理するため、PIDを初めて触る人でも設定を戻せる状態を保ちながら安全に作業を進められます。
Betaflight PIDチューニングは初心者でもスライダーで進められる

初心者のPIDチューニングでは、Roll、Pitch、YawのP値やD値を一つずつ直接入力するよりも、Betaflight ConfiguratorのPIDチューニング画面にある簡易スライダーを利用する方法が現実的です。
スライダーは関連する複数の値を一定の関係に保ちながら変更するため、個別数値を闇雲に動かす場合よりも、どのような飛行特性を変えているのか把握しやすくなります。
ただし、PIDは壊れたプロペラや緩んだネジを修理する機能ではないため、設定変更より先に機体を正常な状態へ整え、短いテスト飛行と温度確認を繰り返すことが重要です。
機体の異常を先に直す
PIDを変更する前に、曲がったプロペラ、欠けたブレード、緩んだモーターネジ、傷んだベアリング、割れたアーム、動くフライトコントローラーなど、振動を発生させる原因を取り除く必要があります。
機械的な振動をPIDやフィルターだけで抑えようとすると、反応が鈍くなるだけでなく、D項がノイズを増幅してモーターやESCを過熱させる可能性があるため、正常な機体をチューニングの出発点にしてください。
- 欠けや変形のないプロペラ
- 滑らかに回るモーター
- 緩みのないフレーム
- 適切に固定されたFC
- 配線に触れていないジャイロ周辺
- 正しいモーター回転方向
卓上でモーターを確認するときは必ずプロペラを外し、USB接続中に予期せずアームしないよう送信機やモード設定にも注意します。
修理や組み直しの後は、PIDを変更する前にデフォルトに近い状態で飛ばし、症状が設定ではなく機体側から発生していないかを確認することが遠回りに見えて最短の手順です。
現在の設定を保存する
チューニングを始める前には、ConfiguratorのCLIでdiff allを取得するか、設定バックアップ機能を利用し、元の状態へ戻せるデータを保存してください。
PIDプロファイルを複製できる環境では、正常に飛んでいるプロファイルを残したまま別のプロファイルで調整すると、変更前後の比較がしやすくなり、現地で設定を見失った場合にも復旧しやすくなります。
バックアップのファイル名には機体名、ファームウェアのバージョン、保存日、使用したプロペラやバッテリーを記載すると、後日別の機体や古い設定と取り違える失敗を防げます。
Configurator上で表示される項目名やCLI変数はファームウェア世代によって変わることがあるため、古い解説から一部の行だけをコピーせず、使用中のバージョンに対応する設定として管理することが大切です。
デフォルト状態で基準を作る
近年のBetaflightは一般的なクアッドコプターがデフォルト設定でも飛行できるよう設計されているため、初飛行前から多数のPID値を変更するのではなく、まず標準状態の挙動を基準として記録します。
静かなホバリングだけでは問題が見えにくいため、安全な高度と広さを確保したうえで、緩やかな前進、短いスロットル上昇、左右のターン、軽いRoll入力とPitch入力を試し、音や映像の揺れも観察します。
この段階で激しい振動、突然の上昇、甲高いモーター音、制御不能に近い揺れが出た場合は、チューニングを続けず直ちに着陸し、プロペラの向き、FCの向き、モーター順序、ネジの緩み、ジャイロの状態を再点検してください。
基準飛行の映像や感想を残しておけば、設定変更後に単なる慣れや思い込みではなく、プロップウォッシュ、バウンスバック、姿勢保持、スティック追従性が実際に改善したかを比較できます。
プリセットは条件を読んで使う
BetaflightのPresetsタブにはTUNE、FILTERS、RATESなどのカテゴリーがあり、機体条件に合うプリセットを利用すれば、初心者が多数の関連項目を一から設定する負担を減らせます。
ただし、プリセットは万能な完成設定ではなく、プロペラサイズ、バッテリーセル数、モーターKV、機体重量、用途、ファームウェア対応範囲などの前提条件を持つ設定集です。
最初はBetaflight公式のPresetsタブ解説を確認し、ステータス、作者、対応ファームウェア、説明、警告、選択オプションを読んでから適用してください。
名称が有名という理由だけでシネリフター向け設定を軽量レーサーへ入れたり、旧バージョン用のCLIを新しいファームウェアへ貼り付けたりせず、適用前のバックアップと適用後の短時間テストを必ず行います。
スライダーの役割を区別する
PIDチューニング画面のスライダーは見た目が似ていますが、機体の追従力、動きの減衰、スティック入力への先回り、姿勢の保持など、担当する働きが異なります。
初心者は一度に複数のスライダーを動かさず、症状に対応する項目を一目盛り程度変更し、同じ飛行課題を試してから次の判断へ進むと原因と結果を結び付けやすくなります。
| スライダー | 主な役割 | 上げすぎの兆候 |
|---|---|---|
| Tracking | PとIを中心に追従力を高める | 細かな振動や熱 |
| Damping | Dで速い動きを減衰する | モーター発熱や鈍さ |
| Stick Response | FFで入力反応を速める | 開始時の飛び出し |
| Dynamic Damping | 急操作時のD上限を高める | 急操作時の異音や熱 |
| Drift-Wobble | Iによる姿勢保持を調整する | 低周波の揺り返し |
詳細な項目名と働きは公式PID Tuning Tabにも整理されているため、Configuratorの表示と照らし合わせながら利用すると誤解を減らせます。
Master Multiplierは全体へ広く影響するため、通常の5インチ機や小型機を初めて調整する段階では優先せず、TrackingやDampingなど目的が明確なスライダーから扱う方が安全です。
Trackingから追従力を整える
Trackingは主にPとIの強さへ関係し、スティックで指示した角速度や外乱後の姿勢へ機体をどれだけ強く追従させるかを調整するスライダーです。
Trackingが不足するとターン中にラインが膨らむ、急な入力の後に機体が落ち着かない、プロップウォッシュで大きく崩れる、Pitch方向の機首が頼りなく動くといった感触が現れることがあります。
反対に上げすぎると、直線飛行やスロットルを上げた場面で細かな振動音が出たり、映像に高周波の揺れが見えたり、モーター温度が上がったりするため、振動が出る手前まで上げる競争をする必要はありません。
初心者はデフォルトから一目盛り動かして短く飛び、良くなったか、変わらないか、悪化したかを記録し、変化が判断できないときは元へ戻して別の原因を探す姿勢が重要です。
Dampingで揺り返しを抑える
DampingはD項を中心に調整し、機体が速く回転した後や外乱を受けた後に動きを止める働きを強めるため、フリップ終了時の跳ね返りやプロップウォッシュの改善に関係します。
Dampingが低すぎる場合は操作への反応が軽快でも、急旋回から抜ける場面でブルブルと揺れたり、フリップやロールを止めた後に一度行き過ぎて戻ったりする症状が出やすくなります。
D項はジャイロノイズの影響を受けやすいため、Dampingを上げるほど常に良くなるわけではなく、傷んだプロペラや荒れたモーターベアリングがある機体では発熱や異音を急激に増やすことがあります。
着陸後はバッテリーを外してモーター温度を確認し、可能であれば非接触温度計を使い、以前より明らかに熱い場合や短時間で触れにくい温度になった場合は設定を戻して機体の振動源を調べます。
Stick Responseは最後に好みを合わせる
Stick ResponseはFeedforwardを中心に変化させ、スティックが動いた瞬間に機体を先回りして反応させるため、PIDによる安定性そのものよりも操縦入力への鋭さへ強く影響します。
値を高くするとレースや素早いフリースタイルで機体が指へ直結したように感じられますが、送信機を急に動かした瞬間の飛び出し、フリップ開始時の過剰反応、終了位置の行き過ぎが発生することがあります。
シネマティック撮影や滑らかなラインを重視する人は、反応が速いことだけを目標にせず、手の震えや小さな入力が映像へ現れにくい範囲に抑える方が扱いやすくなります。
TrackingとDampingで機体の基本的な追従と減衰を整えた後にStick Responseを調整すると、PID不足による遅れと単なる操縦フィーリングの違いを判断しやすくなります。
PIDの意味を飛行症状から理解する

PIDの数式を完全に理解しなくてもチューニングは可能ですが、P、I、D、Feedforwardがどのような場面で働くかを知っておくと、症状と設定を結び付けやすくなります。
各項目は単独で動くのではなく、Pが生み出した強い反応をDが抑え、Iが時間をかけて残る誤差を修正し、Feedforwardが操作開始時の遅れを減らすように協力しています。
一つの症状に複数の原因が考えられるため、名称だけで決め付けず、発生するタイミング、振動の速さ、スロットル位置、操作の有無を観察することが大切です。
Pは現在のずれへ反応する
Pは目標と実際の回転速度に生じた現在の差へ比例して修正を加えるため、機体をスティックの指示へ強く追従させる中心的な要素です。
Pが低いと風やプロップウォッシュで姿勢を崩した後の戻りが弱く、ターンのラインが曖昧になりやすい一方で、高すぎると修正が強すぎて細かな往復運動を起こします。
- 低すぎる場合は柔らかく曖昧
- 適正なら指示へ素直に追従
- 高すぎる場合は速い振動
- 高スロットル時だけ出ることもある
P不足と低いRate設定はどちらも鈍く感じられますが、Rateは最大回転速度やスティック曲線を変え、Pは設定された目標へ追い付く力を変えるため、同じ項目として扱わないでください。
操作速度そのものを変えたい場合はRate Profileを見直し、目標へ遅れて付いてくる感触を改善したい場合にTrackingやPの影響を疑うと、調整の方向を誤りにくくなります。
Iは姿勢のずれを蓄積して戻す
Iは時間とともに残り続ける誤差を蓄積し、風、重心の偏り、スロットル変化、長い旋回などによって機体が目標から離れ続ける状態を修正します。
Iが不足するとオービットや長いターンで機首の角度を保ちにくい、スロットルを上げ下げしたときに姿勢が変わる、ゼロスロットル付近でラインが抜けるといった症状が現れます。
| 場面 | I不足の見え方 | I過多の見え方 |
|---|---|---|
| 長い旋回 | 姿勢が徐々に外れる | ゆっくり揺れる |
| スロットル変化 | 機首が上下する | カット後に揺り返す |
| フリップ終了 | 角度を保ちにくい | 低周波で戻り過ぎる |
| 外乱後 | ずれが残る | 収束に時間がかかる |
急なスロットル変化で姿勢が崩れる場合は単純にIを全域で高くするだけでなく、一時的にIや関連補正を強めるAnti Gravityの働きも確認します。
Drift-Wobbleスライダーを動かすときは、長い旋回での保持が良くなるかと、スロットルカット後に低い周波数の揺れが増えないかを両方観察してください。
Dは速い動きへブレーキをかける
Dは動きの変化を見て減衰を加えるため、急停止時の行き過ぎや素早い振動を抑え、荒れた空気へ入ったときのプロップウォッシュ耐性を高めます。
一方でジャイロ信号に含まれる細かなノイズにも反応しやすく、ノイズを強く増幅する性質があるため、Dを増やす作業ではモーター温度と音の変化を特に慎重に確認しなければなりません。
フリップ後のバウンスバックだけを見てDを上げ続けても、モーター出力の飽和、I-term Relax、Feedforward、機体の慣性、プロペラのグリップなど別の原因が支配的なら改善しないことがあります。
Dampingを上げても症状が変わらない場合は元へ戻し、同じ方向へ設定を積み増すのではなく、ログ、モーター出力、スティック入力、機械的振動を含めて原因を切り分けます。
初心者向けPIDチューニングの実践手順

実際の調整では、同じ場所、同じプロペラ、同程度のバッテリー残量、似た風の条件でテストし、設定以外の変化をできるだけ減らします。
一回のフライトで複数の項目を大きく変更すると、改善した理由も悪化した理由も判断できないため、一項目を少し動かして同じ課題を飛ぶ方法を繰り返します。
テストは短時間で十分であり、異音、映像の振動、制御の違和感、モーター温度の上昇を感じたら、バッテリーを使い切るまで飛ばさず着陸してください。
安全なテスト項目を固定する
チューニング用のテスト飛行は派手な技を連続する必要がなく、正常なホバリング、直線加速、左右ターン、短いスロットルパンチ、フリップやロールの停止、降下気流への進入を順番に試せば主要な症状を観察できます。
毎回違う技や違う速度で飛ぶと設定差を比較できないため、広く安全な場所で無理なく再現できる短いルーティンを決め、各動作を一回ずつ丁寧に行います。
- 低い出力での安定ホバリング
- 中速の直線飛行
- 左右の一定旋回
- 短いスロットル上昇
- 一回のフリップ停止
- 自分の下降気流への進入
テスト中は設定画面を思い出そうとせず、振動が出たスロットル位置、操作の開始時か終了時か、RollとPitchのどちらか、音が高いか低いかを覚えることへ集中します。
可能であればDVRやアクションカメラを記録し、飛行後に映像と音を確認すると、操縦中には気付きにくい微振動やフリップ終了時の小さな揺り返しを比較できます。
一度に一項目だけ動かす
初心者が最も守るべき原則は、Tracking、Damping、Stick Response、フィルターを同時に変更せず、一つの仮説に対して一つの設定だけを動かすことです。
例えばターンで機体が頼りなく感じるならTrackingを少し変更し、フリップ停止後の速い揺り返しならDampingを試し、操作開始だけが鈍いならStick Responseを検討します。
| 順番 | 作業 | 判断 |
|---|---|---|
| 1 | 症状を一つ選ぶ | 発生条件を言語化 |
| 2 | 関連項目を少し変更 | 他項目は維持 |
| 3 | 同じルーティンを飛行 | 改善度を比較 |
| 4 | 温度と音を確認 | 異常なら戻す |
| 5 | 設定値を記録 | 次の変更へ進む |
変更幅が小さすぎて違いを感じられない場合でも、いきなり端まで動かさず、一段階追加して再テストし、悪化し始めた位置がわかったら一つ前へ戻します。
良い変化を感じても別の場面に悪影響が出ることがあるため、目的の動作だけでなく、直線飛行、高スロットル、スロットルカット、プロップウォッシュも確認して総合的に判断してください。
温度と音を毎回確認する
PIDチューニングでは飛び方だけでなく、モーターの温度、甲高い発振音、ザラザラした回転音、アーム直後の不自然な震えを毎回確認する必要があります。
特にDampingやD Term Filter Multiplierを攻めた設定へ動かすと、見た目には飛んでいても高周波ノイズによってモーターへ細かな指令が大量に加わり、発熱が進む場合があります。
着陸後は機体をディスアームし、バッテリーを外してプロペラが完全に停止したことを確かめてから温度を測り、四つのモーターのうち一つだけ熱い場合はそのモーターやアーム固有の問題も疑います。
気温、飛行時間、プロペラ負荷によって温度は変わるため絶対値だけで決めず、同じ条件のデフォルト設定より急に熱くなったか、設定変更と同時に音が変わったかを重視します。
飛行症状から変更項目を見つける

機体が揺れるという表現だけでは原因を特定できないため、揺れの速さ、発生するスロットル位置、操作との時間関係、特定の軸だけかを分けて観察します。
高周波の細かな振動と、ゆっくりした左右の揺れでは疑う設定が異なり、急操作の終了時だけ起こる現象と、直線飛行中に続く現象も同じ方法では直せません。
次の対応は出発点として利用し、設定を変更しても改善しない場合は機械的な振動、モーター出力の飽和、Rate、プロペラ、重心などへ調査範囲を広げます。
振動の速さで原因を分ける
目で追いにくい細かな振動や甲高い音は、PやDの過多、フィルター不足、傷んだプロペラ、モーターベアリング、フレーム共振など高い周波数の問題を示すことがあります。
ゆっくり左右や前後へ揺れる場合は、Iが強すぎる、Pとのバランスが悪い、機体の姿勢保持に別の問題があるなど、低い周波数の現象を疑います。
- 細かく速い揺れは高周波側
- ゆっくり往復する揺れは低周波側
- 高スロットル限定ならゲインや共振
- 操作終了時限定なら減衰やFF
- 一軸限定なら構造や軸別設定
- 常時発生なら機体点検を優先
映像に揺れがあるだけでPID異常とは限らず、カメラマウント、NDフィルター、プロペラの微小な傷、アクションカメラの手ぶれ補正条件が原因になる場合もあります。
目視、DVR、HD映像、モーター音、Blackboxで同じ現象が確認できるかを比較すると、映像系だけの問題と機体制御の振動を切り分けやすくなります。
症状とスライダーを対応させる
症状から設定を選ぶときは、一つの現象に一つの正解があると考えず、最も可能性の高い項目から小さく試して反応を見る方法を採ります。
特にバウンスバックはD不足だけでなく、Feedforward過多、I-term Relax、モーター飽和、プロペラの制動力、機体の大きな慣性でも発生するため、Dを上げ続けないことが大切です。
| 主な症状 | 最初に見る項目 | 併せて確認する点 |
|---|---|---|
| 追従が弱い | Tracking | Rateとの混同 |
| 停止後に速く跳ねる | Damping | FFと飽和 |
| 操作開始が鈍い | Stick Response | RCリンクとRate |
| 長い旋回で姿勢が抜ける | Drift-Wobble | 重心と風 |
| スロットル変化で機首が動く | Anti Gravity | 機体の推力余裕 |
| プロップウォッシュで崩れる | Damping | プロペラとフィルター |
設定を少し動かして症状が明確に改善すれば方向は合っていますが、変化がない場合は同じ項目を極端にする前に元へ戻し、別の原因を検討します。
飛行スタイルによって好ましい感触は異なるため、レース機の鋭い反応をシネマティック機へ求めたり、重量級機へ軽量機と同じ停止感を求めたりせず、用途に合う妥協点を探してください。
プロップウォッシュを切り分ける
プロップウォッシュは機体が自分の乱れた下降気流へ入ったときに姿勢が崩れる現象であり、急降下からの旋回やスプリットSの出口などで発生しやすくなります。
Dampingを少し高めると改善する場合がありますが、プロペラの状態、機体重量、モーターの応答性、フィルター遅延、フレーム剛性、スロットル操作も影響するためPIDだけで完全に消せるとは限りません。
プロップウォッシュを再現するときは低空へ高速で突入せず、安全な高度で穏やかな降下から自分の気流へ入れ、同じ角度とスロットル操作で変更前後を比較します。
DampingやDynamic Dampingを上げた結果として通常飛行が鈍くなったりモーターが熱くなったりする場合は、わずかな改善と引き換えに安全余裕を失っているため設定を戻す判断も必要です。
プリセットと高度な機能を安全に活用する

スライダーで基本的な飛行特性を整えた後は、RPMフィルター、Dynamic D、Blackboxなどを利用すると、感覚だけでは判断しにくい問題を詳しく調べられます。
ただし、高度な機能は機械的な不具合を隠す道具ではなく、正常な機体の性能を詰めたり、再現する症状の原因を確認したりするための手段です。
初心者はすべてを同時に最適化しようとせず、デフォルトと公式プリセットを基準にしながら、必要になった機能だけを一つずつ学ぶと設定の迷子になりにくくなります。
RPMフィルターの前提を確認する
RPMフィルターは双方向DShotでESCから各モーターの回転情報を受け取り、モーター回転数に連動するノイズへノッチフィルターを配置する仕組みです。
適切に動作すればモーターノイズを狙って除去しやすくなりますが、対応するESCファームウェア、正しいモーターポール数、正常な双方向通信が前提となります。
- 双方向DShot対応の確認
- ESCファームウェアの対応
- 正しいモーターポール数
- エラー率の確認
- プロペラを外した卓上試験
- 有効化後の温度確認
公式のDShot RPM Filtering解説では、RPM情報を使ったノイズ除去とDynamic Idleへの利用が説明されているため、設定前に対応条件を確認してください。
RPMフィルターを有効にしたからといって、初心者が直ちにすべてのLowpassフィルターを弱める必要はなく、まず自動調整を含む標準設定で正常に飛ぶことを確かめます。
Dynamic Dは通常時と急操作を分ける
Dynamic Dは穏やかな飛行中に使う基本のDと、急操作やプロップウォッシュ時に一時的に高めるD Maxを分け、通常時の発熱を抑えながら必要な場面で減衰力を増やす機能です。
現在の公式説明ではDampingが基本側、Dynamic Dampingが急操作時の上限側に関係しますが、CLI変数名はファームウェア世代によって変更されているため古い解説との混在に注意が必要です。
| 状態 | 主に働く値 | 目的 |
|---|---|---|
| 滑らかな巡航 | 基本D | 熱と遅延を抑える |
| 速いフリップ | D Max側 | 停止時の行き過ぎを抑える |
| プロップウォッシュ | D Max側 | 一時的に減衰を強める |
| 振動の多い機体 | 過剰上昇に注意 | ノイズ増幅を防ぐ |
Betaflight公式のDynamic D解説では基本D、D Max、D Max Gainなどの関係とバージョンによる名称変更が整理されています。
初心者は基本Dが適切か確認する前にDynamic Dampingだけを大きく上げず、急操作時に異音や発熱が増えた場合は上限やゲインを下げて元の安全な状態へ戻してください。
Blackboxは原因確認に使う
Blackboxはスティックの指示、ジャイロの動き、P、I、Dの出力、各モーターへの指令などを記録し、操縦者の感覚だけでは見分けにくい遅れや振動を可視化できます。
ログを見るときはグラフを眺めるだけで結論を出さず、問題が起きた時刻をDVRと照合し、SetpointへGyroがどのように追従したか、モーター出力が上限や下限へ張り付いていないかを確認します。
公式Blackbox Flight Data Recorderには記録されるデータ、保存先、ログレート、解析ツールに関する基本情報が掲載されています。
Blackboxを搭載していないFCでもスライダーと短いテスト飛行による調整は可能なため、ログがないことを理由に危険な数値変更を行わず、判断できない症状ではデフォルトへ戻す選択を優先します。
安全な基準を守ればPID調整は難しくない
BetaflightのPIDチューニングを初心者が成功させる鍵は、他人の数値をそのまま入力することではなく、機体の異常を先に修理し、現在の設定を保存し、デフォルト状態の飛び方を基準として残すことです。
基本的な順番はTrackingで追従力を確かめ、Dampingで速い揺り返しやプロップウォッシュを整え、Stick Responseで操縦入力への鋭さを好みに合わせる流れとなり、各変更の間には同じテスト飛行とモーター温度の確認を挟みます。
振動、バウンスバック、姿勢のずれといった症状は一つのPID項目だけで決まらないため、設定を動かしても変化がなければ元へ戻し、プロペラ、モーター、フレーム、重心、Rate、フィルター、モーター出力の飽和を含めて原因を見直してください。
公式プリセット、RPMフィルター、Dynamic D、Blackboxは有用ですが、正常に飛ぶ標準設定を失わないことが最優先であり、一項目ずつ小さく変更して改善と副作用を記録する習慣を持てば、自分の機体と飛行スタイルに合う安定した設定へ着実に近付けます。


